トランプを使ったマジックを本格的に学びたいけれど、『カードマジック事典』は入門書としておすすめなのだろうか、と疑問に思っていませんか?
内容の方も気になりますよね。
そこで、この記事では『カードマジック事典』のレビューを行っていきます。
結論から入ると、『カードマジック事典』は、以下のような方におすすめです。
- カードマジックの持ちネタが10個位になった。
- 「聞いたことがある」程度の技法・テクニックが増えてきた。
- きちんと基礎技法を理解したくなってきた。
それでは詳しいレビューに移ります。
『カードマジック事典』の概要
『カードマジック事典』はカードマジックの入門書です。
高木重朗(たかぎしげお)さんというマジシャンの方が書かれた本になります。
この本では、仕掛けの無い普通のトランプを使用したマジックを中心に扱っています。
そして、技法編とマジック編の2部から構成されています。
今回レビューしたのは、私の手元にある第7版(1989年 発行)になります。
『カードマジック事典』の内容
それでは早速、目次に沿って内容を確認していきましょう。
前付:カードマジックの基礎知識
前付として、カードマジックの基礎知識が解説されています。
カードの名称、歴史、カードマジック用語など、基本的なことがここで解説されています。
"技法編"の内容
本の前半にある技法編は、全部で17のパートに分かれています。
そして、それぞれのパートで、数種類~10程度の技法が収録されています。
聞き慣れない用語のオンパレードかもしれませんが、その辺りも含めて解説しますね。
- カウント
- カット
- カル
- グライド
- グリンプス
- サイド・スティール
- シークレット・アディション
- シャフル
- チェンジ
- ディーリング
- パス
- パーム
- フォース
- ブレーク
- マルティプル・リフト
- リバース
- その他の技法
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1. カウント(Count)
カウントという用語は、英語の count(数える)に由来します。
その意味の通り、カードを数える技法のことです。
カードマジックでは、カードを多く数えたり、少なく数えたり、特定のカードを見せないように数えたりと、様々な場面で使われます。
2. カット(Cut)
カットという用語は英語の cut(切る)が語源ですね。
トランプの山を途中で持ち上げることで上下2つの山に切り分け、その上下を入れ替えるような技法の総称になります。
カードを混ぜる動作の一環として使われることが多いです。
3. カル(Cull)
カルという用語は英語のcull(間引きする)に由来します。
カードを両手の間に広げる動作の中で、特定のカードを気付かれないように抜き出してくる技法になります。
4. グライド(Glide)
グライドという用語は英語の glide(滑る)に由来します。
トランプの一番下にあるカードを滑らせてずらす技法です。
5. グリンプス(Glimpse)
グリンプスという用語は英語のglimpse(チラ見)に由来します。
観客に気付かれないように、観客のカードや特定のカードを確認する技法です。
6.サイド・スティール(Side Steal)
サイド・スティール(サイド・スチールとも呼ばれる)という用語は、英語のside(側面)と steal(盗む)が由来です。
トランプの山を持った時の側面から、カードを抜き出すため、このように呼ばれます。
7. シークレット・アディション(Secret Addition)
シークレット・アディションという用語は、英語の secret(秘密)とaddition(付加)が由来です。
あるカードだけを手にとったように見せかけて、それ以外のカードも密かに付け加えるような技法のことをいいます。
8.シャフル(Suffle)
シャフル(シャッフルとも呼ばれる)という用語は、英語の Shuffle(混ぜる)が由来です。
文字通り、カードを混ぜる技法のことです。
このシャッフルの動作の中で、混ぜたように見せかけて混ぜなかったり、特定のカードを都合の良い位置に動かしたり、ということも行います。
9.チェンジ(Change)
チェンジという用語は英語の change(変える)に由来します。
スイッチ(Switch)と言うこともありますね。
あるカードと、別のカードをすり替えるために使う技法です。
10.ディーリング(Dealing)
ディーリングという用語は英語の deal(配る)が由来です。
単にディール(deal)と言うこともあります。
カードを配ることを意味しており、普通に配ったように見せかけて、特定の位置からカードを配るような技法があります。
11.パス(Pass)
パスという用語は英語の pass(通す)が由来です。
トランプの山を上下に分け、上の山を持ち、下の山と手の間を通して、下に移動させるような技法です。
これにより、山の上下を入れ替えます。
カットは観客から見ても上下を入れ替えていることが分かるようにやりますが、パスは観客に気付かれないように行います。
12. パーム(Palm)
パームという用語は英語の palm(手のひら)に由来します。
手でカードを隠し持つ技法のことです。
13. フォース(Force)
フォースという用語は英語の force(強制する)が由来です。
マジシャンが選んで欲しいカードを、観客に強制的に取らせる技法のことです。
(ちなみに、個人的に最も知られたくないのはこれ。)
14.ブレーク(Break)
ブレークという用語は英語の break(割る)に由来します。
観客から見えないように、特定のカードがある位置に指を挟むなどして、割れ目を作っておき、目印にします。
15.マルティプル・リフト(Multiple Lift)
マルティプル・リフトという用語は英語の multiple(複数)とlift(持ち上げる)が由来です。
1枚のように見せかけて、複数枚のカードを持ち上げるような技法です。
有名なダブルリフト(Double Lift)は、このマルティプル・リフトに含まれます。
16.リバース(Reverse)
リバースという用語は英語の reverse(逆転させる)が由来です。
トランプの中にあるカードの一部を密かにひっくり返し、表と裏を逆転させる技法です。
17.その他の技法
上記に分類できなかった技法として、十数種類の技法がここで解説されています。
"マジック編"の内容
本の後半では、マジック編と題して、150以上ものマジックが解説されています。
これらのマジックは、以下の5つのパートに分かれています。
- カード当てのマジック
- カードが一致するマジック
- カードが移動するマジック
- ギャンブル形態のマジック
- その他のカードマジック
その他、附録として、特殊なカードやデック、更に数枚だけのカードを使って行うパケット・トリックも数種類解説されています。
1.カード当てのマジック
オーソドックスなカード当て(選んだカードを当てる)が紹介されています。
カード当ても更に14の項目に細分化され、その項目ごとに10種類前後の作品が収録されています。
- ごく普通に当てるカード
- 指先で当てるカード
- 声で当てるカード
- 枚数目で当てるカード
- ストップによって当てるカード
- サンドイッチで当てるカード
- ひっくり返って当たるカード
- 飛び出すカード
- 差し込んで当てるカード
- 変化して当たるカード
- 予言によって当てるカード
- 他の超能力で当てるカード
- 枚数を当てるカード
- その他
2.カードが一致するマジック
カードの数が一致したり、同じ場所から同じ数字のカードが出てきたりするマジックです。
こちらは以下の5項目に下位分類され、それぞれ7~8種類程度の作品が収録されています。
- 私のまねをしてごらん
- そろって現れるカード
- 同時に現れるカード
- 偶然の一致
- その他
3. カードが移動するマジック
「トランプの山の中」だったり、「ある場所から違う場所へ」だったり、カードが移動する現象を含んだ作品が収録されています。
選んだトランプが一番上に上がってくるやつで有名なアンビシャスカードもここで解説されています。
- デック・パケット内で移動するカード
- 交換するパケット
- 飛び移るカード
4.ギャンブル形態のマジック
カードゲームのデモンストレーションを行うマジックです。
- ポーカー
- その他のギャンブル
5.その他のカードマジック
上記に分類されない10程度の作品が収録されています。
『カードマジック事典』のレビュー
解説はどんな感じで書かれているのか
専門用語を使いながら、割と簡潔に説明されています。
途中までですが、文体は以下のような感じで、マジックによって手書きの挿絵があったり無かったりします。
ワイキキ・カード・ロケーション Wikiki Card Location
◆現象
客のカードをデックに戻し, リフル・シャフルとカットをしたうえで当てる.◆準備
なし.◆方法
出典:高木重朗(1989). カードマジック事典. 107-108.
①客にデックをシャフルさせ, ほぼ均等に3つの山に分けさせる.
②客に好きな山を選ばせ, それをシャフルさせてから, そのトップカードを覚えてトップに戻してもらう. 残りの山もシャフルさせ, 表向きに置かせる.
評価
初心者の入門書としてふさわしいか、という観点で評価していきます。
良い点
『カードマジック事典』の良い点は、技法・テクニックの網羅性でしょう。
私もマジックを続けて長いですが、おおよそカードマジックをするのに必要と思われる技法は全て載っていると思われます。
むしろ、『カードマジック事典』の技法を全てマスターしなくとも、カードマジックをやる上では十分だと思います。
気になる点
一方で、気になる点として、全くの初心者には分かりづらいのではないか、ということが挙げられます。
まず、マジックの解説部分は、専門用語が当然のように書かれており、説明も端的なので、やや抽象的な印象を受けます。
作品も現象別に整理されていますが、基本的に技法パートとの関連性が薄く、分からない技法が出てきたら、技法編で調べて覚えていく、というような形になるでしょう。
まとめ
以上、カードマジック事典の内容のレビューでした。
カードマジックにおいて重要な基礎技法を網羅しているものの、解説の簡潔さ、作品と技法の関連性の低さのため、全くの初心者の方が手を出すには、少し早いのではないかなというのが私の意見です。
ですので、初心者といえども、「カードマジックの持ちネタが増えてきたし、そろそろ技法やテクニックをきちんと覚えていきたい。」という段階で手を出すのが良いと思います。
- カードマジックの持ちネタが10個位になった。
- 「聞いたことがある」程度の技法・テクニックが増えてきた。
- きちんと基礎技法を理解したくなってきた。
もっとも、プロマジシャンの方でも、「『カードマジック事典』を一通りやっておけば、基礎は十分」と言う人もいる位、内容は充実しています。
今になって見返しても学ぶことは多く、カードマジックのレベルを引き上げてくれることには間違いないですよ。