簡単なトランプマジックで、予言のマジックをお探しでしょうか。
予言のトランプマジックは、あまりに簡単だと種が推測されやすいです。
かといって、高度なものはマジック初心者には難しいテクニックを使うものが多く、どういう予言のマジックが良いのか迷ってしまいますね。
そこで今回は、見せ方がとても巧妙で、マジック経験者の私ですら初見では分からなかった、秀逸な予言のトランプマジックを紹介します。
今回は、クロースアップのトランプマジックとして予言の手順を紹介しますが、応用がかなり効くので、パーラー(サロン)やステージでも使える汎用性の高いマジックです。
ぜひ覚えて、演じられるようになりましょう。
【現象】簡単トランプマジック|予言された9桁の数字
演技動画
まずは、簡単トランプマジック『予言された9桁の数字』がどんなマジックなのか、以下の演技動画でご覧ください。
また、演技動画の後にある現象の部分では、文章と写真による解説を行っています。
現象の流れ
それでは、簡単トランプマジック『予言された9桁の数字』の現象の流れを、文章でおさらいしたいと思います。
1から9まで9枚のトランプを示す
まず、スペードのAからスペードの9まで、9枚のトランプを使うことを示します。
カードを配りながら混ぜる
次に、9枚のカードをテーブルの上に配っていきます。
まずは説明のためにマークと数字が見えるように表を向けてカードを配ります。
配り方には2つのパターンがあり、1つは1枚だけテーブルの上にカードを配るパターンです。
もう1つの配り方のパターンは、連続する2枚の上下を入れ替えてから、テーブルに配るパターンです。
すると、上下を入れ替えてテーブルに配った場合、連続する2枚のカードの順番が入れ替わり、数字の並びが変わることが分かります。
このように、1枚だけ配るか、連続する2枚の上下を入れ替えてから配るか、好きなように選びながら、全部のカードをテーブルの上に配っていきます。
最後の1枚までカードを配り終えたら、一通りの入れ替え作業は終了です。
お客さんにカードを混ぜてもらう
一通りの混ぜ方をマジシャンが見せた後、次はお客さんがカードを配ります。
カードを裏向きにし、どういう順番になっているのかは分からない状態です。
カードを1枚配るか、上下2枚を入れ替えてから配るかは、お客さんが好きに選んで構いません。
そして、気が済むまで、カードを配って混ぜてもらいます。
カードの並びを確認する
一通りカードを混ぜ終えたら、表を向けて、数字の並びを確認します。
今回の場合は、357689142(3億5768万9142)という数字が出来上がりました。
ちなみに、9枚のカードの並び方は、9!(9の階乗:9×8×7×6×5×4×3×2×1)通りなので、この組み合わせは、36万2880通りの組み合わせのうちの1つになります。
(YouTubeの動画名はこの数字に由来しています。)
予言が示される
マジシャンは、カードケースの中から1枚のカードを出してきます。
ここには、お客さんが作った9桁の数字が予言されていると言います。
出来上がった数字と予言が一致する
予言のカードを裏返すと、確かにそこには357689142(3億5768万9142)という数字が示されており、見事に予言が的中します。
【解説】簡単トランプマジック|予言された9桁の数字
それでは、解説(種明かし)に入ります。
以下の解説動画をご覧ください。
では、文章にて動画の補足をします。
このマジックでは、カードの入れ替え(に見える)操作を行っても、実際にはカードの順番は逆順になるだけ、というのがポイントになります。
上から、1,2,3,4,5,6,7,8,9の並びであったならば、9,8,7,6,5,4,3,2,1にしかなりません。
例を挙げてみましょう。
上から1,2,3,4,5,6,7,8,9の順に並んだ9枚のカードを持っているとします。
まず、テーブルの上に手元の山の一番上にある「1」を置きます。
次に、上から2枚取って、上の「2」と下の「3」を入れ替えてからテーブルの上に置きます。
つまり、上が「3」で下が「2」になるようにしてから、2枚まとめてテーブルの上に置きます。
すると、テーブルの上のカードは上から「3」,「2」,「1」になりますよね。
お気づきだと思いますが、実は、これは「2」と「3」を1枚ずつ置いていっても同じことです。
置く前に入れ替えたというポーズを取ることで、お客さんは順番が入れ替わったように錯覚するわけなんです。
では何故、最後の数字があんなに複雑なのかというと、最初にお手本を示す時だけ「表向き」で操作しているからです。
お客さんに配ってもらうときは、「裏向き」で、カードの数字とマークが確認できない状態でやってもらいます。
この場合は、先述の通り、一通り配っても逆順になるだけです。
一方、マジシャンが配るときは、カードの数字とマークが確認できる「表向き」でやっているため、カードの順番が入れ替わるわけですね。
そして、お客さんにカードを渡す直前にも、最初に3枚ほど配ったカードを、トランプの山の一番下に回すことで、順番を入れ替えています。
注意深く動画を見ながらやると、最後の並びは、必ず予言のカードに書かれた数字と一致しますので、手元にカードや数字を書いた紙を用意して試してみてください。
ちなみに、このようにカードを逆順に配る原理をディール・ダウン(Deal Down)の原理というらしいです。
古くからある原理で、以下のマジックにも使われています。
【実演】簡単トランプマジック|予言された9桁の数字
この予言のトランプマジックを実演するときのポイントを2つお伝えします。
錯覚の利用
まず、複雑な操作で入れ替えたように錯覚させることがポイントです。
このマジックで特に優れていると思う点は、あたかも本当に順番が入れ替わっているような錯覚を生み出しているところです。
普通に1枚ずつ逆順(1,2,3,4なら4,3,2,1というような並び)で配るのと変わらない動作を、上下を入れ替えてから配るという動きに変えるだけなのに、全く印象が違います。
しかも、最初にマジシャンがお手本を見せるときは、カードのマークと数字を確認するために表を向けているので、実際に配る時と違い、本当に順番が入れ替わります。
このあたりが非常に巧妙ですね。
多くの選択肢から選ばれたことを印象づける
そして、具体的な数字を出し、この数字が36万2880通りという膨大な組み合わせの1つに過ぎないと印象づけるのも、現象が不可能なものである印象を与えるのに効果的です。
お客さんの中で、「他の数字ができていたのではないか」とか、「他の数字の場合はどうなったんだろうか。」とか、そういう想像を掻き立てることで、メンタルマジックの不思議さは増します。
だからといって、あまりにもしつこく計算したり、入れ替えるプロセスを振り返ったりしていると、「本当にそうだったのだろうか…?」と疑念を抱かれます。
ですので、「実はすごい数になるんですよ。」ということを、さり気なく受け入れてもらえるようにするのがポイントですね。
私だったら「1から9まで数字を並べた時の並べ方は36万2880通り」であって、「この数字の並びはその中の1つ」という言い方をすると思います。
どっちも間違ったことは言っていません。
でも、これが「このように入れ替えて、この並び方になる確率は…」などと言い出せば、それは嘘です。
実際は「このように入れ替えたら、並び方は変わらない」ですからね。
冷静に考えて嘘と気づかれることを、不用意に言わないように注意する必要があります。
【応用】簡単トランプマジック|予言された9桁の数字
もちろんトランプマジックとして9桁を数字するマジックとして見せるのも面白いですが、大きめのカードを使い、次のような演出にすれば、パーラーマジックやステージマジックとしても実演できます。
様々な場面で使えるため、応用が効くマジックですね。
暗証番号・パスワードの一致
例えば、何か暗証番号やパスワードを設定するものを使ったマジックが考えられます。
9桁のダイヤルロックを準備し、箱に錠前を設置し、鍵をかけておきます。
無ければ、4桁のダイヤルロックが2つでも構いません。
そして、お客さんに出てきてもらい、上記の演出で入れ替えてもらいます。
数字の入れ替えが終わったら、鍵のかかった箱を示し、ダイヤルロックの数字を、お客さんが並べたものと一致するように揃えます。
すると、ダイヤルロックが開き、中から物が現れます。
中から出すものは何でも構いませんが、お客さんから借りたものを箱の中に移動させても面白いですね。
宝くじの当選
これは、パーティーや宴会など、パーラー(サロン)マジック向けです。
予め9桁の数字が印刷された宝くじを人数分だけ用意して配ります。
「組み合わせ的に言えば、全員が外れることもある」などと断りを入れた方が、もっともらしいでしょう。
もちろん、マジシャンは当選番号が分かっているので、配る際に特定の人に当たりくじを配ることが可能です。
その日が誕生日の人とか、歓迎会で新たに来た社員さんだとか、そういう人に当たりを配っておいてサプライズを演出するのも一興です。
その後、1人のお客さんにお手伝いをお願いします。
現象の部分で示したように、カードを入れ替えていき、出来た数字を当選番号とします。
そして、見事当選した人には、その人が当選者であることを予言していたかのようなプレゼントを用意しておくと、マジックとしても予言が当たって不思議ですし、当選者本人も喜ぶでしょう。
その他の演出のアイディア
この他にも、携帯電話(スマホ)の番号が一致して電話が掛かるとか、配り終わったカードを並べるとお祝いのメッセージが現れるとか、色々と使い道がありそうです。
ただ、意味のある文字列の場合は、全部のカードを見せてしまうと、勘のいい人はオチが見えてしまうでしょう。
ですので、無機質な数字を扱う演技の方がやりやすいと思います。
終わりに
以上、簡単なトランプマジックとして、9桁の数字を予言するセルフワーキングトリックをご紹介しました。
私がこの予言のマジックを最初に見たときは、ディール・ダウンの原理を知っていたにもかかわらず、完全に入れ替えたものだと思い込んでいました。
もちろん、マジックにはテクニックも大事です。
演技の幅を広げてくれるのは間違いありません。
でも、テクニックを使わなくても、不思議で面白いマジックにすることはできるんだなということを、改めて教えてくれる作品です。
ちなみに、このマジックの原理を利用した面白い手順が、『ブルース・バーンスタイン メンタルマジック UNREAL』のp. 84 で紹介されていたので、興味のある方は参考にしてください。
初心者の方でも取り組みやすいですが、テクニックをほぼ使わないからといって、それは練習せずにできるという意味ではありません。
しっかり手順を見直して練習し、知り合いに見せてみてくださいね。